アンティークのある暮らし

アンティーク・骨董品を日常生活に活かす飾り方、使い方の提案

奈良時代から親しまれる天然染料・藍染

藍染は世界各地に存在します。
東南アジア、中央アメリカ、中央アフリカは豆科の藍を、
中国、日本は蓼(たで)科の藍を用いています。

藍染のはじまり

日本の藍は奈良時代に遣唐使により大陸からもたらされました。
なんと、正倉院の琵琶を入れる袋の残片にも藍染が見られます。

「青」は天皇の官位12 階6種の色(紫・青・赤・黄・白・黒、で区分けして位階を表した)のうちの第2位とされ、貴族階級の人々は古より藍で染めた青絹の冠や衣裳を着用していました。

庶民にも広がる藍染

江戸時代に木綿が量産されると、木綿糸を藍で染め日常着や夜具、風呂敷、のれん、手ぬぐいなどの生活雑貨に利用しました。
面白いのは火縄銃の縄糸を藍で染めるようになったことです。
藍の性質から縄がゆっくり細く燃え続けることが役立ったのです。
白花小上粉(しろばなこじょうこ)という蓼藍は薬草としても活用されました。

藍で染めた布は洗うと柔らかくなると同時に布自体も丈夫になり、臭いの成分が虫除けになることから広く受け入れられました。

古代エジプトではミイラを包む布を藍で染めたようです。
ツタンカーメンの棺からも藍染の布が出土しています。

藍染は虫の多い野外の野良着には最適だったでしょう。
風雅な貴族や僧侶、武士も将軍様さえも藍染を着用しました。

浮世絵で使われたいわゆるベロ藍のボカシはヨーロッパ諸国を熱狂させ
「ジャパン・ブルー」という言葉が生まれました。
清潔でさわやかな感じのする色ですから老若男女、誰でもが愛した青、みんなが着たい色ですよね。

わが国の第二次世界大戦の映像では、日本の婦人達が「もんぺ」で活躍している姿が見られます。着物を改良して作られた「もんぺ」は活動的です。なかでも藍で染めた絣の「もんぺ」が多く見られました。「もんぺ」は現代でもパンツルックとして履いてもユニークで可愛いと思いますよ。

江戸時代に四国の徳島藩が広く藍の生産を庇護したことから(俗に言う阿波藍)が全土に広がりました。明治に安くて利便性の良い青の化学染料「インディゴー」が輸入されるまでは一大産地でした。手間暇かかるコスト高の天然藍は次第に廃れていきました。

日本の藍は「ジャパン・ブルー(スポーツの応援カラーで「サムライ・ブルー」なんて言葉もありましたね)」と呼ばれました。

藍染の過程にみる濃淡の表現

藍色には段階があり、染の濃淡で無数のブルーが存在します。
藍染の甕の中から引き上げたばかりの布地は黄土色をしていますが、空気に触れることで色が変化し青く発色します。その工程を何度も繰り返すと藍が濃くなっていきます。
藍の色は薄い色から濃い色へと名前が付けられています。
藍白(あいじろ)、瓶覗き(かめのぞき)、空色、浅葱(あさぎ)、縹(はなだ)、花色、納戸(なんど)、鉄藍、藍、紺、紺藍、紫紺、留紺、等その数48色に和名が付いています。(余談ですが世界の色数の研究で、ある部族では色は2種類しか認識されていないという結果が報告されています。何色でしょうね?)日本人の色彩感覚、色彩眼は半端じゃないです!!ひょっとして世界一かも!?

藍染/型染めの模様

菊や牡丹、桐、唐草模様や鶴、亀、虎、鷹、鯉などの動植物、吉祥模様、幾何学模様の組み合わせの和柄でおなじみのパターンが多いです。

単独の藍色だけでなく、筒描き(染技法の一つで筒に防染糊を入れ、円錐形の筒先から糊を少しずつ出し直接布に模様を描き、糊が乾いたら色差し、色が定着したら糊を洗い落とす)など藍染に華やかな色彩で染められた物もあります。
大漁旗や幟(のぼり)、油単(ゆたん)など大きめの布で仕上げた祝品が流通しました。「こいのぼり」もそうです。

古布として藍染、藍型染めは貴重です。
幾度となく洗われたブルーのかすれ感は味わい深く人気です。

藍は年齢を選ばない素敵な色。
藍染古布で濃淡の色合いを季節に合わせれば、素敵なインテリアやお洋服が出来ます。

骨董店で藍染を見かけたら思い切って購入してみませんか? 
端布でコースターなど作ってみるのも藍染界への第一歩。
暮らしのアクセントになりますよ。

#骨董舎のお留守番でした。

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