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没後70年 森村酉三とその時代

群馬県立近代美術館で開催中の「没後70年 森村酉三とその時代」展に行って来ました。
今回ご縁があり、骨董舎の品物も何点か展示されています。その関係もあり展示初日のレセプションにも参加してきました。

群馬県出身の鋳金家・森村酉三の作品は、第二次世界大戦時の金属供出にあい、ほとんど残っていないということで、地元の作家でありながら群馬県立近代美術館でも大規模な特別展を開催出来ずにいたそうです。

今回は没後70周年ということもあり、近代美術館の総力をあげて展示作品を集めたところ、大変たくさんの作品が展示され、森村酉三の妻・寿々、同時代の鋳金家の作品なども合わせて見ることができます。

美術館の関係者と少しお話させていただいたのですが、「これだけの作品をよく集めた。見応えのある展示になった」と驚きの声を聞きました。

鋳銅鯰置物 森村酉三
1848(昭和23)年
群馬美術展作品、遺作として日展出品

高崎白衣大観音像の銀製模型や、美術展出展作品、龍頭が蛇口になっている水道共用栓、地元の名士の胸像などたくさんの出展作品の中で、私が注目したのは、酉三の代名詞といわれる鳥や動物を象った作品です。なかでも、アールデコ様式のような簡素化された美を表現した作品に惹かれました。今見ても、モダンでおしゃれな作品です。
この作風は、酉三の師である津田信夫の影響を受けているようです。ヨーロッパに留学中だった津田信夫は1925(大正14)年にフランス・パリで開催された万国博覧会(アールデコ博)に工芸部門の国際審査員という要職を務めています。
その博覧会では写実的な表現ではなく、写実を基本としながらも工業製品のような流線型や幾何学的表現を特徴としてたアールデコ様式の作品が注目されました。津田信夫が、報告書のなかで「今日の趣味傾向は、簡素単純に移りつつある。日本の伝統に学んで今日の趣味嗜好や生活様式に合致したもの作りをしていくべきである」と記しているそうです。
(引用:図録・没後70年 森村酉三とその時代より)

芸術の世界においても、過去の栄光や自身の固執した考えに頼ることなく時代の変化や日常生活の変化、趣味、流行を作品に取り入れる。だから現代の私たちが見ても、家に飾りたいと思わせる作品になっているのではないでしょうか?

開会式・レセプション

群馬県立近代美術館長の岡部昌幸さんのご挨拶、展示にご協力いただいた森村家の皆様の紹介などがあり、その後歓談となりました。近代美術館内のお茶室で、庭を眺めながらお抹茶もいただきました。

岡部館長は近代美術が専門で、アール・ヌーボー、アール・デコの美術的価値や素晴らしさを啓蒙している方です。挨拶のなかで東京都庭園美術館で展示企画をされていたというお話がありました。ルネ・ラリックのガラスレリーフなどがある庭園美術館は、私の好きな美術館の一つなので何か近しいものを感じました。

酉三に関わる作家作品も展示 常設展

せっかくなので、群馬県立近代美術館の常設展も見て来ました。
「没後70年 森村酉三とその時代」展に合わせて、旧制群馬県立前橋中学校(現 群馬県立前橋高等学校)の同級生だった日本画家・磯部草丘、洋画家・横堀角次郎の作品や、同時期に活躍していた画家作品なども展示されていました。

「没後70年 森村酉三とその時代」は11月10日まで群馬県立近代美術館で開催しています。お時間のあるときにゆっくりご覧になることをおすすめします。

古好屋グループ・骨董舎 吉池でした。

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