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溢れんばかりの文様の世界「そば猪口」

約300年前にはそば猪口は作られています。最初はそば用として作られたのではなく、上流階級のお膳に「なます猪口」として並んだ器です。和え物、酢の物、珍味が品よく盛られました。中には形が筒状で、上から覗き込まなければ中身が見えないもったいぶった器「のぞき猪口」もありました。

それが18世紀頃、江戸にそば大ブームが訪れ、「そば汁」を入れるのに適していたことから、手持ち具合や底の安定性の良さを追求して改良を重ねた結果、大量に出回るようになりました。地方の窯元も作りましたが、主に伊万里焼の窯元で安価に製作され「北前船」に積まれ全国に渡りました。もはや、そば猪口は日常雑器となり大衆の器となりました。

そば猪口が愛される理由

民芸運動家の柳宗悦いわく「一番驚くのは文様の変化である。このそば猪口ぐらい衣装持ちは無いと言える」と述べています。

一つの器のデザインにこれほど多くの模様があるのは世界広しといえども「そば猪口」の右に出る物は無いのでは!と私も思ってしまいます。

そば猪口のデザイン・文様

画付け作業は、和紙を使った型紙と木炭で写し込み、線書き、そしてダミ筆による染め付けや直描きなどの工程で行なわれています。

主に、植物、昆虫、鳥、動物、自然模様、幾何学模様、判じ絵、逸話、天体、日用品などが単純化されて描かれています。

中には何を表してるいのか不明な絵もありますが、鑑賞のときに、いろいろと想像をかき立ててくれる面白味があり、推理力を刺激されるので頭の体操になります。

江戸職人の遊び心

そば猪口を覗き込むと底に小さな絵が描かれています(無地のそば猪口もあります)。これは「見込模様・みこみもよう」とよばれ、各窯元の印だったり、絵描き職人の遊び心が描かれていたりします。そば猪口コレクターは時代の判定や産地の特定のヒントにしました。見込み絵を鑑賞するのも楽しみの一つですね。

猪口の外側の絵と関連した見込絵が何か分かったとき、思わず江戸時代の職人さんの心が読み取れたようで、江戸と現代が、職人さんと私がピッ!と繋がった感じがして思わずニヤッとしてしまいます。一例を挙げると外側がすました鶴図の時、内底には漫画チックな蓑亀さんがへばり付いていたりします。「鶴亀」のおめでたコンビ登場です。愛らしいですよね、とっても!



そば猪口は、入れる物を選ばない万能選手

手に馴染むうえに口当たりがほど良いそば猪口は……

飾りましょう!
手に取り眺め、見惚れましょう!
小花を活ければお部屋が生き生きします。
小物入れ…なにを入れようかな?     
他に酒器として、酒肴入れとして、お盆に幾つかのそば猪口を並べ、チョッピリずつ料理を盛れば小粋な小料理屋さんの出来上がり。

大きさを選べば、お茶、コーヒー、茶碗蒸しなど。プリンだっていいですよね。思いついた物、何でも入れてみましょう!

とにかく日常雑器なのですから。使ってこその器でしょう。

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